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海にやさしい日焼け止め
“リーフセーフ”処方に注目
管工機材を中心に扱う専門商社である日本管材センター株式会社では、毎月建設設備業界に関する豆知識を紹介しています。
夏が近づき、日差しが強くなってくると欠かせないのが日焼け止め。
しっかりと日焼け対策をして海水浴に出かけるという方も多いと思います。
これまでは温暖化による海水の温度の上昇がサンゴの白化(栄養失調による死滅)の要因とされてきましたが、海に溶け出した日焼け止めの成分がサンゴ礁の生態に悪影響を及ぼしていることが研究で分かり、深刻な環境問題となっていることをご存知ですか?今回は、日焼け止めが及ぼす環境への影響と「リーフセーフ処方」についてご紹介します。

日焼け止めの成分
日焼け止めには、「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」という大きく分けて2種類の成分が配合されています。
<紫外線散乱剤>
紫外線を反射して肌の内部に届くのを防ぐ
・酸化チタン
・酸化亜鉛 など
<紫外線吸収剤>
紫外線を肌の表面で吸収する
・オキシベンゾン
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(オクチノキサート) など
私たちが紫外線から肌を守るために使用している日焼け止めの成分が、直接海やシャワー、水道などを通して水源に流れ込む量は、毎年およそ1万4000トンにも及ぶと言われています。
海への影響
サンゴにはその細胞内に共生することで光合成をおこない栄養を与える褐虫藻(かっちゅうそう)という小さな生物がいます。鮮やかなサンゴ礁の色は、この褐虫藻によるものです。
水温の変化や水質汚染などのストレスがかかると、サンゴは自身を守るために褐虫藻を体外へ追い出してしまうと考えられており、色が抜けて白くなります。褐虫藻のいなくなったサンゴは光合成ができなくなり、やがて死滅してしまうというのが「白化現象」です。
日焼け止めを塗った状態で海に入ると、肌に付着した紫外線吸収剤が海水中に溶け出し、海底に生息するサンゴ礁まで届きます。中でも紫外線吸収剤の一つであるオキシベンゾンが褐虫藻の光合成の妨げとなり、沖合や海水浴場として開放されていない自然の海岸よりも観光客の多いビーチ周辺のサンゴ礁の白化が進んでいることが調査で明らかとなりました。このことからサンゴ礁の白化は海水温の上昇だけが原因ではないと判断され、ハワイ州やタイ、パラオなどではオキシベンゾンをはじめとする紫外線吸収剤が入った日焼け止めの販売・使用が禁止されています。

リーフセーフ処方とは
海外で使用できる日焼け止めの法的規制が進むなか、日本ではまだそのような規制はされておらず、一般的に流通している多くの日焼け止めには紫外線吸収剤が配合されています。
しかし近年、少しずつですがこの問題が取り上げられるようになり、紫外線吸収成分であるオキシベンゾンやオクチノキサートを使用せず紫外線散乱剤によってUVカット効果を高める「リーフセーフ(Reef Safe)処方」の日焼け止めが日本でも普及しはじめています。
「リーフセーフ」は、「リーフフレンドリー」「ビーチフレンドリー」「コーラルフレンドリー」などとも表記されるので、これらのワードがパッケージに書かれているものはリーフセーフ処方と判断できます。
ただし、日本でのリーフセーフ処方では対象となる成分の種類や含有量の明確な制定がされていないため、「リーフセーフ」と謳っていても使用する国によっては規制基準を満たしていない場合があります。海外で日本製の日焼け止めを使用する場合は注意が必要です。
また、現在はリーフセーフ処方を含めたくさんの種類の日焼け止めが販売されていますが、肌に合わないものを無理に使い続けずに自分の体質に合った製品を選びましょう。

私たちにできること
サンゴ礁は「ブルーカーボン」と呼ばれ、二酸化炭素を吸収して地球の温度上昇を抑える大きな役割を果たしています。また、褐虫藻との共生や魚の産卵場所・隠れ家として海の生物たちを守る大切な存在です。
リーフセーフ処方の日焼け止めを使用することは一つの手段として、日焼け止めを塗る頻度自体を減らすために日傘やラッシュガード等を取り入れることもできます。
日々の生活の中で、海の豊かさを守るためにできることは何かを知ること。そして今後はより一人一人が考え、選択することが重要になってきます。
