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地中熱とその利用方法
管工機材を中心に扱う専門商社である日本管材センター株式会社では、毎月建設設備業界に関する豆知識を紹介しています。
自然エネルギーには太陽光や風力など様々な種類がありますが、今回の豆知識では地中熱にスポットをあてて、ご紹介してみたいと思います。
地中熱とは地表からおおよそ200mの深さまでの地中にある熱のことです。深さ10m以深の地中温度は年間を通してほぼ一定で、東京の地中温度は約17℃くらいと言われています。地中温度は気温に比べ夏は冷たく冬は温かいため、その温度差を利用し夏は放熱、冬は採熱をして、空調や融雪などに活用されています。 地中熱の利用方法は大きく5つに分けられます。
■ヒートポンプシステム・・・住宅・ビル等の冷暖房・給湯、プール・温浴施設の加温、農業施設の空調、路面の融雪・凍結防止
●クローズドループ方式

地中から熱を取り出すために地中熱交換器内に流体を循環させ、汲み上げた熱をヒートポンプで必要な温度の熱に変換するシステムです。 このクローズドループ方式による地中熱ヒートポンプシステムは、メンテナンスがほとんど必要ないため適用範囲が広く、住宅・建築物・プール・融雪など様々な所で適用されています。 またこの方式は地中で熱交換が行われ、冷房時の排熱を屋外に放出しないので、ヒートアイランド現象を抑制する効果が大きくなります。
●オープンループ方式

地下水を直接汲み上げてヒートポンプの熱源として利用する方式です。 この方式では井戸水の熱を利用することができます。地下水を直接利用するため、エネルギー効率が高く、省エネルギーです。このシステムは、比較的規模の大きな施設に適用されており、地下水熱利用ヒートポンプシステムとも呼ばれています。
■空気循環・・・住宅・ビル等の保温・換気

空気を地中に通して地盤との間で熱交換するシステムで、住宅・建築物の換気システムの一環として、地中熱を利用しています。このシステムでは、地中に埋設した熱交換パイプ、あるいはダクトに外気を導入・通気して熱交換を行い、夏は冷風、冬は温風を得ることができます
■熱伝導・・・住宅の保温

土間床を介した利用方法で、地中から伝わる熱によって住宅内の保温を行います。多くの場合、エアコンを併用して空調が行われます。この方式は、はるか昔から利用されていて、縄文時代の「竪穴式住居」や野菜を保存する室(むろ)も同じ原理で地中熱を利用していました。
■水循環・・・路面の融雪・凍結防止

主に融雪に用いられているシステムです。地中熱交換器を埋め込み、路面に埋設したパイプとの間で不凍液などを循環させることで、路面の融雪などを行うクローズドループ方式と、地下水を汲み上げ、それを路面に埋設したパイプに通水させるオープンループ方式の2つの方式があります。
■ヒートパイプ・・・路面の融雪・凍結防止

ヒートパイプは、冷媒の蒸発と凝縮で熱を運ぶシステムです。冬に地中の温度が地表に比べて高いと、地中での熱交換でヒートパイプ内部の冷媒が蒸発し、軽い気体となった冷媒は地表に向かって管内を移動します。温度の低い地表環境では、冷媒は周辺に熱を与えることにより凝縮し、この凝縮した冷媒は重力により管内を下降します。ヒートパイプでは自然にこれらを繰り返し、融雪や凍結防止に利用されています。
地中熱は日本中どこでも利用でき、また天候に左右されない自然エネルギーのため安定的に利用できる点が大きなメリットです。様々な場所で利用することが出来る地中熱はこれからますますの普及が期待されています。