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井戸の役割
管工機材を中心に扱う専門商社である日本管材センター株式会社では、毎月建設設備業界に関する豆知識を紹介しています。
昔は生活するうえで必要不可欠だった井戸。現在はあまり見かけなくなってしまいましたが、実は今でも私たちの生活にとって重要な役割を担っています。
世界最古の井戸は約9000年前から存在していたと言われています。昔から井戸は生活するうえで重要な設備で、飲用だけではなく炊事・洗濯などに使う水もまかなっていました。同じ長屋で住む人同士が順番に水を桶などの容器に汲んで、各家庭に用意された大きな水瓶が満ちるまで往復する作業が行われていました。
また井戸に水を汲みに行く作業はその各家庭の主婦たちの仕事でした。「井戸端会議」という言葉は江戸時代に他の人が水を汲んでいる間に主婦たちが井戸の周りで雑談をしている様子が由来となっています。
江戸時代から昭和初期にかけては、井戸の水は滑車を利用して釣瓶桶で汲み上げていましたが、大正時代から手押しポンプが使われるようになりました。その後昭和20年から30年頃にかけて電動ポンプが急速に普及しました。 どこの家庭にも設置されていた井戸ですが、電動ポンプが普及したあと、上水道が普及したため井戸は徐々に使用されなくなっていきました。
★メリットとデメリット
井戸を使用するメリットは基本的に年間を通して一定の温度(16~18℃位)が保たれていること、カルキの臭いがないこと、また災害時には生活用水として活用できることが挙げられます。 逆にデメリットは、水質は地層や環境によって大きく異なるため水質がよくない場合もあり、また水量についても十分ではない場合があることです。
★災害と井戸
あまり使われなくなった井戸ですが、メリットでも紹介したように災害時に活用することができます。 災害時に使われる井戸は防災井戸や災害用井戸などと呼ばれています。自然災害が発生して水道管が破裂したり、水道施設が被災したり渇水が起きた場合には、水の供給が止まってしまいます。断水したときは給水車が出動しますが、需要を満たすだけの水が用意できず、水不足に陥ってしまう可能性があります。防災井戸があれば、災害時や渇水時の水不足の時でも井戸の水を生活用水として利用することが出来ます。
最近は災害に備え、公園、学校、医療施設、保育施設などで防災井戸の整備が進んでいます。学校や公園は災害時の避難場所としても利用されるため防災井戸を設置するのにぴったりの場所であり、日頃から目に留まりやすい場所に防災井戸があることで、防災意識を高める効果もあります。 また近年は多くの自治体で「災害時協力井戸」という制度が運用されています。一般家庭の井戸の所有者が災害時協力井戸に登録し、災害などが起きたときに井戸の水を被災した近隣の住民に提供するという取り組みです。自治体によってはホームページや防災マップに防災井戸や災害時協力井戸の場所が掲載されているところもあるので一度確認しておくと安心ですね。
あまり見かけなくなった井戸ですが今でも私たちの生活にとって重要な役割を担っているのですね。