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「排水トラップ」の機能と破封
管工機材を中心に扱う専門商社である日本管材センター株式会社では、毎月建設設備業界に関する豆知識を紹介しています。
便器や洗面台の下部に曲がった配管がされている光景を見たことはありませんか?
これは、建築基準法施行令において、排水管には設置が義務付けられている「排水トラップ」と呼ばれている装置です。
今回はその構造と効果をご紹介します。
排水トラップとは?
排水トラップとは、排水設備の配管の途中に設けられ、たまり水(封水)によって下水道の悪臭や硫化水素などのガスや害虫、ネズミを遮断し、屋内への侵入を防ぐ器具や装置のことを言います(下図)。多く見かけるのはS字型にパイプを曲げた「Sトラップ」やP字型になっている「Pトラップ」ですが、U字型の「Uトラップ」、お椀のような形をした「わんトラップ」や水洗式便器内のたまり水を封水とした「衛生器具作りつけトラップ」等、数種類のトラップがあります。

破封とは?
トラップ内の封水が減少し、トラップとしての機能が失われている状態のことを「破封」と言い、様々な要因で引き起こされます。Pトラップを例に、ご紹介致します。
◆自己サイフォン作用
2つの管で繋がれた容器がある場合、管の中が満たされた状態であると、2つの容器の内部が同じ量に保とうとすることを「サイフォンの原理」と言います。 大量の水が器具から勢いよく排水されると、サイフォンの原理によって封水分の水も引っ張られて一緒に流れていってしまい、破封することがあります。器具から連続した排水経路内で発生するので、“自己”サイフォン作用と言います。

◆誘導サイフォン作用(吸出し作用)
排水立て管の上部から大量の排水があったとき、排水立て管に近い位置にトラップが設置されているとトラップ内に負圧が生じ、封水が引っ張られて一緒に排水され、破封してしまうことがあります。

◆跳ね出し作用
上部から排水立て管に大量排水された際、排水立て管内から空気が押し出され、トラップ内の水が室内側に噴出し、破封してしまうことがあります。

◆毛細管現象
配管内部に髪の毛などの繊維状の物体が垂れ下がると、毛細管現象により内部の水が排水されてしまいます。浴室の床にある排水口ではトラップ内にこびりついた石鹸等に髪の毛が絡まってしまい、気付かない間に毛細管現象によって破封してしまうことがあります。

◆蒸発
長期間排水が流れないと蒸発により封水が減少してしまいます。例えば、長期の旅行から帰ってきた時にトイレが臭っていた、という経験はありませんか?これは蒸発によって破封してしまい、臭気が排水経路を辿って室内に流れ込んで来たと考えられます。

破封した際には、トラップを通じて下水管からの騒音が聞こえる場合もあるので、破封が起こらないような配慮が必要です。
破封を起こさないようにするためには通気がポイントになります。排水と通気の関係については2021年9月の豆知識「排水・通気の仕組み」をご覧ください。
簡単な構造をしている排水トラップですが、快適な暮らしを送るための重要な装置となっています。手を洗った時に、下の配管を覗いてみてはいかがでしょうか。