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No.12

ベトナムEC市場の成長と課題

Xin Chao(シンチャオ)、ベトナム連絡事務所の樋口です。
今回のシーズンレポートは、ベトナムEC市場の成長と課題についてお伝えできればと思います。

GDP成長率が安定的に6~7%成長し、経済成長著しいベトナム。昨今のコロナ禍で2021年度は全体的成長率が鈍化したとはいえ、世界的にも珍しいプラス成長を維持した国として注目されていますが、中でもEC市場の成長率は非常に高いと言われています。

コロナ禍による巣ごもり需要がEC市場の成長に拍車をかけた事はもちろんですが、ベトナムは意外にもインターネット普及率が高く、ベトナム通信局の統計によりますとインターネット利用者が人口の70%弱となり、世界平均の51.4%を大きく上回っています。この割合は先進国の87%よりは低いですが、発展途上国(44%)、東南アジア45%と比較してもかなり高いと言えます。さらにはスマートフォンを保有する人も6,137万人いると言われ、これは人口の約65%に相当しスマートフォン普及率が世界で最も高い上位10ヵ国に入っているそうです。

ベトナムEC協会が公表したデータによりますと、2015年からの平均成長率が約30%、2015年の40億USDから2019年には115億USD、2020年150億USD、そして2022年には250億USD、2025年までには520億USDまで到達すると予想されています。この市場規模は東南アジアの中ではインドネシアの1,040億USDに次ぐASEAN2位にランクインします。

商品項目別にECを通じた購買の頻度を見ますと、下表通り電化製品を中心にオンラインでの購買率が高く、食品・日用品や衣服はまだオフラインでの購買が好まれているようです。

新型コロナウィルスの流行でEC事業が飛躍的に発展したことは先に述べましたが、下表の代表的なECサイト業者の他に新規参入する業者も多く、中には外資系投資会社などがクラウドファンディングを通じて設立した業者もあり、世界的にポテンシャルの高い市場であることが想像できます。

たしかに、ここ1~2年の間に大きなオフィスビルの前やアパート前には、バイク配達員が大勢待機している光景を日常的に目撃するようになりました。ベトナムではバイクでの配達がメインであり配達料も安いため、若者の中ではコーヒー1杯でもECサイトからデリバリー発注するほど利用頻度が高いそうです。利用者の多くは若者であり20代の利用者が半数以上を占め、その多くがオフィスワーカーと言われています。

さらにベトナムの場合は、ECプラットフォームからの出店だけでなく、個人のSNSから商品を販売するケースも急増しており、1つのマーケティング手法に採用されるほど人気が高いと言われています。ベトナムで利用頻度の高いSNSはFacebook, Tiktok、そしてベトナム発のSNSであるZaloです。

余談ですがこの3つのSNSは私生活のみならず、学校や仕事でも多様に使われています。実際に仕事をする上で私が痛感したのが、ベトナムの方々にとってメール件数よりZaloでの連絡数の方が日常的に圧倒的多い事です。日本では仕事とプライベートを分けるためや、情報漏洩防止又はエビデンス確認のためなどの理由でSNS利用を禁ずる会社も多いかと思いますが、ベトナムで同じ事をやるとうまくいかないことがほとんどかと思います。

またベトナムのレポートによりますと、2020年のECユーザーの割合には著しい変化ありました。具体的には、35〜45歳の女性ユーザーの割合が6%増加し、消費者構造の中で最も高い割合(29%)を占めています。2019年のECユーザーは若年層の独身女性が最も多かったのですが、2020年には既婚者の割合が急増し、EC利用者の67%を占めました。この消費者セグメントがよく購入する製品は主に化粧品です。中年女性のEC利用増加の背景には、所得の増加と、美意識・健康意識の向上といったトレンドがあり、今後ますます市場が拡大すると言われています。下表の通り、ベトナムで最も購入される化粧品の生産地は、驚くことに韓国を筆頭にそのほとんどが輸入品です。ベトナム女性の美意識の高さが伺えます。

最後にベトナムのECサイト市場の今後の課題と見通しについてです。
若年層から普及が始まり中高年層まで利用が拡大、それが都市部のみならず農村部まで利用者・地域が広がり続けているベトナムは、今後も市場規模が更に拡大すると見込まれています。しかしながら、急速な発展に決済管理システムや法整備が追い付かず、決済トラブルや情報漏洩トラブル、また偽物が多く出回っているなど様々な課題が指摘されています。中でも市場拡大に向けて最大の障壁となっているのが、輸送インフラとロジスティクス、特にコールドチェーンの設備の未整備です。交通整備の未発達により道路事情が悪く納品遅延が頻発され、冷蔵トラックや冷蔵倉庫を持つロジスティクスが非常に少ないため、生鮮食品を中心とする食料品の鮮度・品質を保つ事が難しいと言われています。

以上のように、まだまだ発展途上の市場ゆえに課題も多く見られますが、それゆえに様々な角度での市場参入も十分に可能性のある事が伺えるかと思います。